熟成樽について

ウイスキーの熟成・後熟を行なう際の樽はカスク(Cask)と呼ばれます。スコットランドではウッドとも呼ばれます。
ウイスキーの香味の6割~7割が樽に由来すると言われていて、単に保管容器としてだけではなくウイスキーの味わいに重要な役目を果たします。サイズ・樽材の違いによりそれぞれ異なったフレーバーを付与してくれます。

樽材による分類

樽材料としては、固く液体を通しにくい材質の樹齢100年以上のホワイトオークやヨーロピアンオークが主に用いられます。近年ではミズナラ(ジャパニーズオーク)にも注目が集まっています。

  • アメリカンホワイトオーク・アルバオーク
    北米で産出される木でアメリカ・スコットランド・日本など多くの国で利用されています。バーボン業界が使用するカスクのすべてがこのタイプで、シェリー・ワインなどの樽材としても使用されています。
    ウイスキーの色と香味成分の形成に寄与するポリフェノールを多く含み、バニラ・ココナッツ・甘い香辛料の香りをもたらすのが特徴です。
  • ヨーロピアンオーク・スパニッシュオーク、コモンオーク
    スペインのアンダルシア地方ヘレス周辺で作られる強化ワイン・シェリー用の樽材として利用されます。タンニンを多く含み、フルーティーな味わいをもたらします。
  • セシルオーク・フレンチオーク
    以前はコニャック用として使われていましたが、現在スコッチやジャパニーズウイスキーでも使用されています。ホワイトオークとヨーロピアンオークの中間のフレーバーで、タンニンが多くスパイシーを与えます。
  • ミズナラ・ジャパニーズオーク
    日本で産出されるホワイトオークの一種です。戦後日本で樽材が不足した際にサントリーなどが使用したのが最初で、現在は北海道で生育するものが主に利用され、ジャパニーズウイスキーが有名になって以降海外でも採用されるようになりました。香木を思わせる強い芳香性のアロマをもたらし、希少ながらも人気を集めているオークです。他にもパイナップルやココナッツのアロマが得られます。

樽材の種類

ウイスキー樽として使用する前にどんなお酒を貯蔵していた樽なのかによって熟成されたウイスキーの香りや味わいは大きく左右されます。

  • 新樽
    未使用状態の樽を指します。以下の再利用樽に比べて樽材独特の香りがつきやすいと言われます。
  • バーボン樽
    バーボンを貯蔵した樽です。バーボンウイスキーでは樽の再利用は認められていないため、一度利用した樽はスコットランドに輸出・再利用したり、解体されホグスヘッド樽に作り替えられます。
  • シェリー樽
    シェリーはスペイン南部のヘレス周辺でつくられる白ブドウ酒のことです。
    辛口フルボディのオロロソ、深みと甘さを備えたクリーム、力強く濃厚な甘さと芳醇な香りのペドロヒメネスなど様々なタイプがありますが、シェリー樽で熟成することでドライフルーツのような香りと甘さがウイスキーに移り芳醇な個性が備わります。
    現在世界的に人気の樽ですが、熟成が進み過ぎるとブドウの渋みがウイスキーの味わいに悪影響を及ぼすため、熟成の見極めが難しいと言われています。

他にもワイン樽やマディラ樽・ブランデー樽などが使われます。

カスクのサイズ

一般的に樽サイズが大きいと熟成は遅いがまろやかになり、小さいと熟成は早いがハードで荒くなります。

名称 主な原料 サイズ
ゴルダ ヨーロピアンオーク 700L 「太っちょ」を意味するスペイン語で、貯蔵用としてスコットランドでは法的に認められた最大サイズのカスクです。以前はシェリー酒の輸送用として作られていました。
マデイラドラム フレンチオーク 約650L 一般的には二次熟成(フィニッシュ)に使用されるサイズですが、最近では長期熟成用として実験的に用いられるようになっています。
ポートパイプ ヨーロピアンオーク
バット(Butt) ヨーロピアンオーク
アメリカンホワイトオーク
約480L ラテン語で「大きい樽」という意味で、ほとんどがシェリー樽として使用された後にウイスキーメーカーの手に渡るため、シェリーバット(Sherry Butt)とも呼ばれます。
パンチョン(Puncheon) ヨーロピアンオーク
アメリカンホワイトオーク
約500L バットとともにバットよりも丈が短く横幅が広くずんぐりとしています。
原酒と樽材との接する割合が少ないため、熟成が進みにくい反面、品質を安定できる特徴がありサントリー使用しています。
ミズナラ(mizunara) ミズナラ 約480L
ホグスヘッド(hogshead) アメリカンホワイトオーク 約250L 豚一頭の重さであることから命名されています。
スコットランドやアイルランドで一般的に利用されるサイズで、バーボンバレルを一度解体し、容量を増やすために樽材を追加し、新しいヘッド(鏡板)を用いて組み上げます。
バリック アメリカンホワイトオーク
フレンチオーク
約225~300L ワイン熟成につくられたカスクです。
バレル(barrel)
ASB
ヤンキー
ホワイトオーク 180~200L フランス語の樽(baril)が語源と言われています。
バーボンの新樽として使用された後、旧樽として他国のウイスキー熟成やラム・テキーラなどのメーカーで再利用されます。
小さめサイズなので樽材の成分が染みこみやすく熟成が進みやすいのが特徴です。
オクタブ(Octave) 約68L
クォーターカスク
ブラッドタブ
ファーキン
アメリカンホワイトオーク 40~50L 最小サイズのカスクで、かつては蒸留所のプライベートな顧客用に使用されていました。現在でブルイックラディでは、ウイスキーを個人所有したいという顧客のためにブラッドタブを使用しています。
また、ビームサントリーがラフロイグやアードモアの原酒を短期間でフィニッシュするためにで特注生産しています。→ラフロイグ クォーターカスク