基本情報
- 蒸留所名(J):ザ・グレンリベット
- 蒸留所名(E):The Glenlivet
- オーナー:ペルノ・リカール/シーバス・ブラザーズ
- 地域:スコットランド/スペイサイド/リベット/マレー
- 生産ウイスキー:モルト
- 由来:ゲール語で「静かな谷」
- 仕込み水:地下200mの水脈を源泉とする「ジョージーの湧水」
水温は年間5~8℃と一定していて、ミネラル分に富む硬水で特有の香気成分が含まれており、糖化工程において大麦から多くの糖分を引き出し、発酵段階で独特で芳醇なフレーバを生み出しているといいます。
シングルモルトとして世界で2番目に売れていながらも、シーバスリーガルやロイヤル・サルートといったペルノ・リカールが販売しているブレンデッドウイスキーの原酒としても多く使用されています。
歴史
創業者であるジョージ・スミスは1792年に生まれ、青年時代から建具屋として働きながらウイスキーの密造を行なっていました。
当時のスペイサイド地方は密造酒業者が多くジョージもその中の1人だったのですが、当時から熟成年数が異なる原酒をマリッジした彼のウイスキーは密造酒ながら英国中で評判だったといわれています。
1823年に酒税法が改正され、政府が許可証を発行する公認の蒸留所が制定されることとなると、その翌年にはジョージがアッパー・ドラマンに創業させた蒸留所が第1号の公認ウイスキー蒸留所となります。
当然ながらこの酒税法の改正は密造業者にとって評判が悪く、政府公認蒸留所に指定された業者は裏切り者として他業者からの攻撃の的となりました。ジョージ自身も身の危険を守るため、彼の借地人であり酒税法改正に寄与したと言われる第4代ゴードン公爵アレクサンダー(Alexander Gordon, 4th Duke of Gordon)から2丁の拳銃を貸与されたそうです。
1849年、ジョージは新たにケアンゴーム=デルナボ蒸留所を創業させますが、1858年に既存の蒸留所が火事で消失してしたため、翌年には2つの蒸留所を纏める形で現在の場所にグレンリベット蒸留所を建設・稼動させています。
この頃からグレンリベット蒸留所の名声にあやかろうと多くの蒸留所が「グレンリベット」を名乗るようになりました。自らのグレンリベットの名誉を守るため、ジョージは「グレンリベット」という名前の所有権は自社にあると主張するために提訴をおこないます。
長い裁判の末、1884年にスミス家のグレンリベットと、当時のブレンダーのアンドリュー・アッシャーだけが「グレンリベット」と名乗れるという判決が下され、これ以降蒸留所では「THE」がつくようになりました。
ただし、「グレンリベット」はスペイサイド全体を指す地名であったこともあり、グレン・マレー=グレンリベット蒸留所(Glen Moray-Glenlivet)のようにハイフン付きで「グレンリベット」を名前として使用することは認められていました。
1977年にシーグラムが蒸留所の経営権を買収後、2001年にシーグラムからペルノ・リカールへ買収され現在に至ります。
製法の特徴・こぼれ話
- 地元マレーのポートゴードン村にあるクリスプ・モルトハウス産の大麦を使用しています。ピートは使用していません。
- ポットスチルは胴体とパイプ部分にくびれがあるランタン型で、ネックが細長く釜の幅が広くなっています。ネックが細長い構造では、雑味のある蒸気は上昇することができず、ピュアな軽い蒸気だけが上昇し抽出されます。幅の広い釜は蒸留中にアロマ同士の相互作用を促し、甘く豊かなフレーバーを生み出します。
- 使用されるオーク樽の多くはバーボンウイスキーの熟成に使用された古樽ですが、一部シェリー酒やポルト酒の古樽が使用されています。
- ボトリングはエディンバラ郊外ニューブリッジにあるシーバス・ブラザーズ・ボトリング工場が担当しています。
- 2010年にマッシュタン・ウォッシュバック×8基、ポット・スチル×6基が増設され、イギリス皇太子出席のもとで稼働が開始されています。この設備追加により75%もの増産が可能になったようです。