ウイスキーの一般的な製法

ここではウイスキーの一般的な製法について纏めます。ウイスキーの作り方と一概に言っても国や蒸留所により製法は異なるため、一般的な製法について説明しておきます。

原料

ウイスキー作りの原料として重要なのは「酵母」「水」そして「穀物」の3つになります。

酵母・イースト/Yeast
酵母はアルコール発酵のもととなる菌。
酵母自身の力では穀物のデンプンをアルコールに変えることはできないため糖化工程が必須です。
上面発酵酵母・液中分散酵母など、色々な種類の酵母が存在しています。

水(仕込み水)
酵母の生育に好ましいミネラル分がバランス良く含まれる地下水など、原則として軟水が使われます。

穀物
ウイスキー作りに使用される穀物は、大麦・小麦・モルト(大麦麦芽)・トウモロコシ・ライ麦などが挙げられます。最近ではキビや粟を使った珍しいウイスキーもあるそうです。
どの穀物をどのくらいの比率で使うかが味わいに変化を生みます。

製麦(モルティング)

製麦・モルティング/Maltingは、原料の大麦を発芽させる工程です。次の工程の糖化の役目を担う酵素を大麦自身の中につくらせる為に必要な工程です。

まず、スティープ/Steepと呼ばれる浸麦槽で2日程度大麦に水を吸わせて(浸麦)、発芽させます。
発芽した大麦は大麦麦芽(グリーンモルト/Green malt)となり、その体内に糖化酵素が生まれたのち、熱風により乾燥させ成長を止めます。

スコットランドでは、各蒸留所がキルンと呼ばれる乾燥塔でピートの煙で燻すことでスコッチウイスキー独特の香りを与えていましたが、1960年代からモルトスターと呼ばれる専門業者に一括委託することが一般的になってきました。

ピーテッド・モルト/Peated malt
ピートで燻された麦芽のこと。

キルン/Kiln
主にスコットランドで伝統的にある乾燥塔。
エルギンの建築家チャールズ・クリー・ドイグ/Charles Cree Doigが設計したパゴタ屋根のキルン塔が有名で、1880年代にはスコットランドで56もの蒸留所が導入していた。

フロアモルティング/Flour malting
大麦を床に広げて発芽させると伝統的な製麦法。
木製シャベル(シール/Shiel)で大麦を鋤いて空気中の酸素を麦芽に与え発芽を均等に進める手法だが、通常7~10日要し熟練の技を必要とするため、現在行なっている蒸留所はわずかです。

ウイスキーキャット/Whisky cat
ディスティラリーキャットとも呼ばれ、原料の大麦を食べるネズミや小鳥を退治するために蒸留所で飼われていたネコ。現在は法的な規制により減少している。

糖化・マッシング

糖化・マッシング/Mashing工程は、大麦麦芽中の糖化酵素であるアミラーゼ/Amylaseの力でデンプンを糖分(ブドウ糖)にかえる工程です。仕込み工程とも言われ、次の発酵工程とともにブリュワー/Brewerと呼ばれる職人がマッシュハウスと呼ばれる作業所で行います。

まず、デンプン質が分解されやすいように、モルトミル/Malt millという機械で大麦麦芽をグリスト/Gristと呼ばれる粉末状に粉砕します。

グリストはマッシュタン/Mash tun(糖化槽・仕込み槽とも)と呼ばれる巨大な円形容器(ステンレス・銅・鋳物など様々)に入れられ、そこに温水の仕込み水を加えて攪拌し、マッシュ/Mash(もろみ)と呼ばれる63~4度のお粥状態にし、濾過すると、ウォート/Wort(麦汁・糖液)が生成されます。
グレーンウイスキーの場合は、蒸煮した穀物に大麦麦芽を加えてこの工程で糖類に変えています。

スパージ/Sparge
グリストには1回につき3~4度仕込み水が加えられるが、次の発酵工程にまわされるのは初回と2回目に抽出されたウォートのみである。3回目以降の仕込み水を加える工程をスパージと呼び、糖分が少なく発酵にはかけられないものの次回の糖化用の温水として再利用されます。

ドラフ/Draff
糖液を抽出した後の麦芽の搾りカスのこと。高タンパクで高栄養価のためそのまま家畜の飼料として利用されていたが、現在では初留釜で蒸留後に残った廃液(ポットエール/Pot ale、スペントウォッシュ/Spent wash)と加工し、ダークグレーン/Dark grainと呼ばれる家畜用飼料に加工される。

発酵

発酵/Fermentation工程は、糖化によって生成されたウォートをアルコール分約7%の発酵液に変える工程です。前の糖化と同じ作業所で行なわれることが多く、併せてタンルーム/Tunroomと呼ばれます。

発酵槽(ウォッシュ・バック/Wash back)でウォートに酵母を加えることで、酵母のもつ酵素の働きによりウォートの中の糖分が分解されアルコールと炭酸ガスになります。

発酵は約60時間おこなわれ、ウォッシュ/Wash(発酵液/もろみ≒ビール)が生成されます。
これによりウイスキー特有の香味成分をつられます。

発酵槽
バーボンウイスキーにおいては発酵槽のことをファーメンター/fermentarとも呼ぶ。
鉄製・ステンレス製のものが一般的だが、昔ながらの木桶発酵槽を使用している蒸留所もある。木桶発酵槽は、もともと乳酸菌などの成分を多く含んでおり、もろみに様々な成分を生成され、上面酵母の活性化にも有利と言われている。

ビアウェル/Beerwell
バーボンウイスキーにおいて、発酵が終わったモロミが蒸留工程に移される途中に用意されている容器のこと。連続式蒸留ではファーメンター(発酵槽)から直接送るわけではなく、巨大なステンレス製のタンクにモロミを貯め、連続式にポンプで蒸留器の上部から投入する。

蒸留

発酵が終わったウォッシュを蒸留器にかけてアルコール濃度の高い酒をとり出す工程です。
1気圧のもとで水の沸騰点は100度ですが、酒の主成分であるエチル・アルコールの沸騰点は78.325度。この差を利用して初めに蒸発しアルコールの蒸気を冷却して高濃度の酒を生成します。

蒸留工程が終わった蒸留液はまだ無色透明で、ニューポット/New pot、またはニューメイクスピリッツ/New make spiritsと呼ばれます。
モルトウイスキーではアルコール濃度60~70%、グレーンウイスキーでは93度前後になります。

単式蒸留器

主にモルトウイスキーの蒸留に使用され、銅製でポットスチル/Pot stillとも呼ばれ、1回蒸留するたびに中身を入れ替えて使います。
ジャパニーズやスコッチでは単式蒸留器で2回蒸留しアルコール濃度を高めます。1回目を「初溜」、2回目を「再溜」と言います。アイリッシュでは単式蒸留器で3回蒸留しています。

蒸留釜に発酵液を入れ加熱蒸発させると、気化したアルコールはラインアーム/Lyne armと呼ばれる連結管を通って冷却装置に運ばれます。水で覆われた冷却装置の中には、ウォーム/Wormと呼ばれる螺旋状の銅製チューブがあり、気化した酒精分がこの蛇管を通ることで凝縮されてニューポットとなります。
ラインアームの中間にピュアリファイアー/Purifierと呼ばれる小さな補助冷却装置が取り付けられている場合もあります。

主に以下の3パターンの形状がありますが、形や大きさ高さなどの違いで多彩な味わいが生み出されます。

ストレート型
Straight still
ネックがまっすぐなため、アルコール以外の成分が多めに残ります。外気に接する面積が小さいため、力強く重厚で複雑な仕上がりになります。
バルジ型
Bulge still
胴体に膨らみがあり、アルコール以外の成分をあまり残さないため、すっきりした仕上がりになります。外気に接する面積が大きいため繊細なウイスキーとなります。
ランタン型
Lanthanum still
ボディからネックにかけて膨らみがあるのが特徴で、外気に接する面積はストレート型とバルジ型の中間です。重たい香りの成分がヘッドの膨張部で還流されて釜に戻るため、軽くて華やかな香りに富んだスッキリとしたモルトが生まれるのが特徴です。

また、単式蒸留器の加熱方式は、主に以下の方式があります。

直火加熱方式
Open fire distill
ガスや重油を燃やし約1,000℃の直火でゆっくり蒸留する方式。もろみの一部がトーストされ、香ばしくて力強い味わいになります。
蒸気加熱方式 単式蒸留器内部のパイプに蒸気を通す加熱コイルや加熱缶を置く方式。
外部加熱方式
エクスターナル ヒーティング
External heating
加熱を単式蒸留器の外で行った後で中へ戻す特殊な方式です。
グレンバーギー、ミルトンダフ、グレングラッサなどで採用されています。

連続式蒸留器

一般的にグレーンウイスキーやアメリカやカナダで使用されている連続的に蒸留する装置を指します。
箱を積み重ねたような数十段の棚をもつ塔を使用し、1回の蒸留中に棚ごと精溜を繰り返し、アルコール濃度の高い液を連続的に溜出し、雑味が少なく風味の軽いクリアな酒質になります。単式蒸留に比べ効率的にスピリッツを生成すことが出来るのが特徴です。

連続式蒸留器の原型は1826年にスコットランドのロバート・スタイン/Robert Steinが発明していますが、当時は工業用アルコールやジンの材料を得るために使用されていました。
1831年になると、アイルランドのイーニアス・カフェ/Aeneas Coffeyが香りや味を残せるように改良した、2塔からなるカフェ式スチルを発明しました。特許(パテント)をとったため、パテントスチルとも呼ばれています。

その後、様々な連続式蒸留器が生まれ、数塔を併立されるものもあり、現在では、コンティニュアス・スチルとも言われています。アメリカでカラム(塔式)・スチルと呼ばれているのもこの一種です。

チャコール・メロウイング

バーボンやテネシーウイスキー特有の製造工程です。
蒸留後の原酒をサトウカエデの木炭層で濾過することで、なめらかな味わいを生み出します。
テネシーウイスキーは蒸留直後に濾過しますが、バーボンは樽熟成後に一般的に濾過します。

熟成(エージング)

蒸留の終わった原酒を樽で長時間貯蔵すること工程です。
ウイスキー製造期間の99%の時間がこの工程に費やされており、味わいや香りに与える影響が非常に大きい工程です。熟成により、蒸留直後は無色透明であったニューポットから不快な香味成分は取り除かれ、まろやかで上品な酒質になります。また、樽材から溶け出したタンニン・リグニンといった成分が溶け出し、少しずつ琥珀色に変色していきます。アルコールと水の分子が結合することで円熟味や旨みも増加されるとも言われていますが、そのメカニズムまだ完全には解明されておらず、神秘的に「時の技」と表現されます。

熟成のはじまり
熟成の歴史は明らかになっていないが、17世紀のスコットランドでウイスキーが厳しい課税対象となった際に酒税官吏の目から逃れるように樽ごと地中に埋めて隠していたことが始まりと言われている。一方で、既にスペインのシェリーやポルトガルのマデイラ・ワインなどは当時からお酒の熟成文化があったため、それをウイスキーに応用させたとも言われている。

天使の分け前(エンジェルシェア/Angel’s Share)
ウイスキーが樽で熟成中に蒸発することを指し、ウイスキーの一部を天使に献上することでより美味しくなるとされている。
スコットランドの場合、熟成1年目で3~4%、それ以降は毎年1~2%ずつ樽の中身は減少していくと言われている。バーボンの産地のケンタッキー州では、スコットランドよりも平均気温が高いため、1年目は10~18%が、2年目以降も4~5%が蒸発していく。

悪魔の取り分(デビルズカット/Devil’s cut)
熟成後に樽からウイスキーを出した際に樽に残ってしまう分。通常バーボンウイスキーでは使用済の樽をスコッチやジャパニーズなどの蒸留所に売るため、デビルズカットは新たな原酒の香り付けの役割を果たす。空き樽に水を浸し浸ませて抽出した、デビルズカットのバーボンウイスキーも存在する。

エージング・セラー
熟成中の樽を保管する酒庫のことで、冷涼で澄んだ空気の地が望ましいと言われている。

オープンリック式 /Openrick
バーボンウイスキーでの一般的な貯蔵方法で、バーボンバレルを活かすために木製に3~4樽、7層建てくらいのトータル20数段の樽を高層式の熟成方法。積み重ねた樽の中でも最良の場所は屋根の下から1~2段くらいであると言われていて、ここをイーグルズネスト(Eagle’s nest、鷲の巣)と呼んでいます。

ヴァッティング・ブレンディング

熟成を終えたウイスキーは樽同士でヴァッティングされたり、異なる原料のウイスキーとブレンディングされ、バランスのよい味わいにさせます。

ヴァッティング/Vatting
モルトウイスキー同士、もしくはグレーンウイスキー同士を組み合わせることで、「大きな桶」というヴァット(Vat)が由来です。ヴァッティングしたウイスキーに純粋な水を加え、アルコール度数を薄めることをリデューシング/Reducingと言います。
スコッチでは同一蒸留所内でのヴァッティングは1853年から、異なる蒸留所間のヴァッティングは1860年に認められました。

ブレンディング/Blending
モルトウイスキーとグレーンウイスキーを配合することで、ヴァッティング技術者をブレンダーと言い、ブレンダーの長をチーフブレンダー、最高責任者をマスターブレンダーと呼ぶ。

後熟・マリッジ/Marriage

原酒を混合した後、風味を安定させるためしばらく寝かせる工程を指します。
フランス語の「結婚・融合」を意味する「マリアージュ」からきています。

タイトルとURLをコピーしました